あだ名は「水蜜桃」!

皆様こんにちは。河野商店です!

先輩の連載、第3弾です。ぜひお楽しみください!

 水菓子と書いても今の人にはわからないかもしれない。フルーツをかつてはこう名付けていた。それらがまだ贅沢な品であった時代の呼び名である。では水蜜桃(すいみつとう)とは何か。さらにわからないであろう。桃のこと。

 さて漱石先生とフルーツにまつわる話題を続けよう。

 「三四郎」は代表作のひとつだが、この文中に水蜜桃が出てくる。東京帝国大学に入学するために九州から上京する途中、三四郎は列車内で「髭のある人」と出会う。汽車の車窓から水蜜桃を求めたこの人物は「食べませんか」三四郎に勧める。

 その下りを引用する。

 三四郎は礼を言って、一つ食べた。髭のある人は好きとみえて、むやみに食べた。三四郎にもっと食べろと言う。三四郎はまた一つ食べた。二人が水蜜桃を食べているうちにだいぶ親密になっていろいろな話を始めた。

 その男の説によると、桃は果物のうちでいちばん仙人めいている。なんだか馬鹿みたような味がする。第一核子(たね)の恰好が無器用だ。かつ穴だらけでたいへんおもしろくできあがっていると言う。三四郎ははじめて聞く説だが、ずいぶんつまらないことを言う人だと思った。

 この「髭のある人」が実は広田先生(詳細はこの名著を読まれることをお薦めするが)で、第一高等学校の教師。この物語のキーマンとなる。当初「髭のある人」の名前を知らなかった三四郎は広田先生を「水蜜桃」とあだ名している。

 桃は昔から厄災を逃れる「不老長寿の実」として珍重されている。

先輩、ありがとうございました!

次回作もご期待ください!