最近、レモン、齧りました?

皆様こんにちは。河野商店です!

先輩の連載、第6弾です。ぜひお楽しみください!

JR京浜東北線・大井町駅から徒歩数分、ゼームス坂のなだらかな傾斜がある。

品川方面に向かうこの坂の中盤あたり、小道を入ったところに「レモン哀歌の碑」がある。

詩人高村光太郎の代表作「智恵子抄」の、智恵子はここ「ゼームス坂病院」で終焉を迎えている。

大正初期、当時としては進取の気性であった智恵子は画家としての独り立ちを目指したがその思い叶わず、精神を病むようになる。

光太郎の献身的な看護も実効しないまま智恵子は亡くなる(昭和13年没)。

病院は取り壊されてしまったが、その跡地に「レモン哀歌の碑」が建てられた。

死の直前、智恵子はレモンを口にした。その風景を光太郎は詩に託す。

以下に掲げる。

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で 
私の手からとつた一つのレモンを 
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ 
トパアズいろの香気が立つ 
その数滴の天のものなるレモンの汁は 
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう

以前、取材でこの地を訪ねたことがあります。碑の前にはレモンがひとつ、供えられていたことを思い出しました。

先輩、ありがとうございました!

近いうちにゼームス坂に行って、写真を撮ってアップしたいと思います。ご期待ください!

それでは、次回作でお会いしましょう!